diary/Kojima

・最近読んだ本(マンガ :-)

「月賓(ビン)〜孫子異伝」

しばらく前から、SuperJump誌に掲載されているのが気になっていたのだけど、 少し時間があったのでマンガ喫茶でざっと読んで、面白かったので改めて購入。

sonbin.jpg

歴史的に言うと、「孫子(孫先生)」と呼ばれる人物が二人いる(春秋時代の呉の孫武と戦国時代の斉の孫ビン) ことは司馬遷の史記にも記載されているのだけど、現在まで残っている「孫子」という書物は一つだけで、 果してこれがどちらの孫子の書物か、ということは古くからずいぶん議論されていた。

# ちなみに現存する「孫子」は三国志の英雄、魏の曹操(武帝)が注釈したバージョン

ところが1970年代に中国の銀雀山の漢代末期の墓から多数の竹簡が発掘されて、その中に「孫子」が2種発見され、 現在広く読まれている武帝注の「孫子」とは異なる、斉の威王に使えた孫子(孫ビン)の兵法書が確認された、 というのは以前から知っていたのだけど、この歴史に埋もれていたもう一人の孫子(孫ビン)を主人公にしたのがこの漫画。

背景はそういう風にかなり硬派なんだけど、内容的にはいかにも今風な設定で、女の子のキャラも可愛いし、 それなりに面白くは読めた。

ただ、歴史を前提にしている漫画にしては、公式の歴史から逸脱している設定が目立つのも事実。 そもそも戦国時代には中山国とかがあって斉に匈奴が直接攻め込むことは不可能なことはさておき、 「孤鳳卒(クーフェンツゥ)」的な専門集団を組織するのはむしろ墨家的な考え方で、 農民兵を前提とした孫子的な兵法家の考え方ではないなぁ、というのはちょっと気になるところ。

しかも最終的には孫ビンの描いていた「中原統一国家」の夢は、孫子的な兵法家ではなく、 法家によって国家と人民を戦闘マシンに組み上げた西方の成り上がり国家の「秦」によって、 他の長い歴史を持つ国々がブルドーザーで整地されるように征服されることで成し遂げられた、 という大きな歴史の流れとどうストーリーを折り合わせるかが長期的な見所になりそう。

# 後に縦横家として活躍する蘇秦や張儀もちゃんと登場させてはいるけれど



添付ファイル: filesonbin.jpg 197件 [詳細]

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Last-modified: 2021-12-17 (金) 16:35:42