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「哲学者ディオゲネス 世界市民の原像」 山川偉也/講談社学術文庫
大きな樽に住み,目の前に立ったアレキサンダー大王に「日向ぼっこの邪魔をするな」 と言ったとか,「犬」と自称して,昼間のアテネの街中にランプを灯して「人間」 を探していると言った,等々の奇行で有名な哲学者ディオゲネスについての本.
著者は,ディオゲネスを同時代のアリストテレスと対比して,アリストテレス - アレキサンダー の世界帝国の流れと,ソクラテス - ディオゲネス - 初期キリスト教徒の世界市民の流れを描いてみせるのだけど, 確かにディオゲネスを祖とするキュニコス派の考え方は初期キリスト教徒の考え方に近いものがある気はするな.
でも,その意味では,同じくキュニコス派の流れをくむストア派の代表でもある皇帝哲学者 マルクス・アウレリウスが淫祠邪教としてキリスト教徒を弾圧したのは歴史の皮肉という気もするところ.
まぁ,新約聖書がすべてギリシア語で書かれていたり, 初期のキリスト教会が成立したのはたいていギリシア文化が華やかな土地だったりするので, 初期キリスト教へのギリシア哲学の影響というのはきわめて大だとは思うけど, そこにディオゲネスが出てくるのは結構意外だったし,なかなか面白い指摘だという印象.